篠田です。一つ質問をさせていただきます。
「経営の目的って一体なんですか?」
この質問に対して胸を張って答えられる方がどれ程おられるでしょうか。「経営」とは非常に身近な言葉ですが、意外に深く考える事がありません。
なぜこのような質問をするかと言うと「経営」という言葉の本質を考えると経営者が何をすべきなのかが見えてくるからです。
経営戦略を考える際、まず最初に「経営」という言葉をしっかりと認識しておく必要があります。経営者を名乗るならばこの言葉を説明出来ないわけにはいきませんよね。「経営」者は何をしている者なのか。
けいえい【経営】
- 力を尽くして物事を営むこと。工夫を凝らして建物などを造ること。
- あれこれと世話や準備をすること。忙しく奔走すること。
- 継続的・計画的に事業を遂行すること。特に会社・商業など経済的活動を運営すること。また、そのための組織。
広辞苑より
これは一般的な言葉の意味であり、本質ではありません。経営とは、事業の目的を達成するための行動です。事業の目的を明確にしない限り、経営の本質は見えてきません。
あなたが事業を行う目的を明確にする
私たちは目的を持って事業を運営しています。では、その目的は何なのか。目的は人や組織によって異なるでしょう。
- 企業を永続的に発展させる
- クライアントを幸せにする
- 従業員を幸せにする
- 社会貢献する
- 業界の技術を向上させる
- 何が何でも金儲けをする
色々あると思いますが、まずはあなたが事業を始めた理由ややりがいを感じた瞬間を思い返してみるとあなたの考える経営が何なのか見えてくるのではないかと思います。
事業の目的を明確にするという事は、経営理念を作る最初の第一歩と言えるでしょう。まずはあなた自身が何を達成するために経営しているのか理解ください。
先人が語る「経営の目的」とは
「事業体とは何か」を問われると、たいていの企業人は『利益を得るための組織』と答える。たいていの経済学者も同じように答える。しかし、この答えは、間違いであるだけではない。的外れである。
P・F・ドラッカー
「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」これ以外に、企業の目的はないと、私は思っています。
稲盛和夫
利益を得ることを目的として経営するという事は、的外れとドラッカーは言っています。利益は何のためにあるか、考えてみてください。利益は万が一の時に企業を潰さない為の備えであり、より企業を強くする為の将来の投資の蓄えです。利益は企業を継続させる為の手段であり、利益を得ることが目的ではないのです。
では、何の為に企業を強くし、潰さないようにしないといけないのか。これは稲盛和夫氏の言葉に答えがあります。
全従業員の物心両面の幸福を追求する。人類、社会の進歩発展に貢献する。このためにはお金を稼ぎ、会社を強くしなければなりません。
あなたの企業に在籍する従業員は奴隷になる為にあなたの企業に入ったわけではありませんね。あなたの企業に入れば、金銭的に豊かになり、良い経験を積んで良い人生を送れると思うから、あなたの企業に入るのです。起業することや、夢を追いかけること、自給自足の生活をすることよりも、総合的に幸せになれると判断して就職活動という道を選んでいるわけですから。
また、社会的に認められることをしなければ、正しい経営とは言えません。テロ組織の運営をすることや詐欺集団をまとめることは正しい経営と言える行為ではありませんね。
まとめると、次の3点を追求することこそが経営だと言えます。
- 人間性・・・企業に関わる人が精神的・金銭的に豊かになる
- 社会性・・・人類や社会の進歩発展に貢献する
- 経済性・・・企業を存続させるため、また社会に貢献するために利益を上げる
この3つのうちいずれか1つでも欠落していると、正しい経営をしているとは言い難いでしょう。とはいえ、企業のステージによってこれら3つの内、重視するものが変わってくることは事実です。
創業したての企業であれば、利益が安定せず、まずは売上の獲得と利益の向上を目指すでしょう。経済性の追求が第一となります。すると満足な給与や十分な休暇が与えられず、人間性の追求が疎かになるかと思います。しかし、それはそれで良いのです。
問題となるのは、社長はたっぷり休んで報酬をたくさんもらっているにも関わらず、社員が苦しい思いで仕事をしている場合です。社員と会社がお金を得るという目的のための道具となってしまっているのです。お金は、会社を強くし社員を幸せにするという目的のための道具であることを忘れてはなりません。
経営の目的をあなたの言葉で説明出来るようにしてください
「経営の目的とはなんですか?」という質問に答えられるようにしてください。経営者がやるべき事がその答えに詰まっています。
間違っても「銀行からお金を引っ張ってくるのが社長の仕事や!」なんて言わないで下さいね。そんな誰にでも出来る事は経営者のメインの仕事ではありません。強力な理念・哲学のもとに行動し、組織を引っ張っていく存在が経営者です。
営業もマーケティングも財務も経理も人事も広報も、全て経営者以外の人間でも行えます。経営者にしか出来ないこと、それは経営の目的を明確にし、経営理念に落とし込み、企業全体に浸透させて動かすこと。
規模の大小に関わらず、経営者にしか出来ない仕事はこれだけです。なので、極端な話をすると、経営について考えていない経営者は代えがきくということです。
一度、自身の経営について深く考え、より強い組織作りをするにはどう落とし込めば良いのか整理してみてください。
コメント